教育目標と理念

皆さんは世界のことをどれだけ深く理解しているでしょうか。新聞やニュース、Webサイト等から得た知識だけで全てを知っているつもりになっていませんか。また、Deep LearningによりAIが急速な発展を遂げたことに伴い、機械翻訳技術も向上していることから、外国語を学習し習得することに疑問を感じている人もいるかもしれません。確かに、新聞やニュース、Webサイトを視聴することで起こった出来事を知ることはできますし、機械翻訳を使えば様々な国で起きていることの一端を知ることはできるかもしれません。

ですが、“百闻不如一见(百聞は一見に如かず)”と言うように、ある国のことを深く理解するためには、国内で基礎的な知識を身に付けた上で、その国へ赴き、現地の社会や文化、習俗を体験、実践し、研究活動を行うことが肝要です。そのための重要なツールとなるのが言語なのです。言語には、その言語が第一言語として使用される国や地域の文化的背景、歴史的背景、社会的背景等が色濃く映し出されています。したがって、あなたが興味を持った国のことを深く知り、そして、その国の人と本音で語り合いたいのであれば、やはり、まずはその国の言語を習得する必要があるのです。もちろん、言語を習得するだけでは不十分で、言語の学習と並行して、あなたが興味を持った国の社会や文化、歴史、習俗等への理解を深めることにより、機械翻訳では訳出することができない、言葉の裏に隠された真意(言外の意)をも理解することができるようになるのです。

さて、これから皆さんが学ぼうとしている中国語は、数千年の歴史を持つ中国を背景に発展してきた言語です。そして、同時に多様性に富んだ言語でもあります。私たちは一口に中国語と呼称していますが、中国には10の方言(北方方言、晋語、呉語、徽語、湘語、贛語、閩語、粤語、客家語、平話)のほか、多くの少数民族語が存在しています。したがって、中国には約80の言語が存在していると言われています。また、中国は広大で起伏にとんだ国土を有しているため、各地域の文化や習俗、人々の特徴も多様で、“一方水土养一方人(地域によってその土地ならでは人が育つ)”という言葉が存在するほどです。加えて、中国語が中国だけではなく、台湾、香港、シンガポールでも公用語の一つとして使用されていること、世界中に散らばる華人や華僑のアイデンティティを支える要素の一つであることを併せて考えると、その多様性は更に大きく広がります。中国語は、とても魅力的で興味深い国々を背景に持つ言語なのです。

SFCの中国語教育は、言語を学ぶのはもちろんのこと、同時にその背後にある文化、歴史、社会、民族などを知ることにより、「中国語で世界を知り、世界への扉を開く」ことをモットーに、各種科目を設定しています。語法や語彙の習得に加え、中国、台湾等の文化、歴史、社会、習俗を学ぶことを通して、多角的に中国語圏の国々を捉えながら、研究やフィールドワーク、ビジネスに堪えうる中国語運用能力を有し、自ら課題を発見し、解決に向けて動くことにより、未来社会の創造に貢献できる人材の育成を目指します。インテンシブ1期から2期、3期、4期、スキルと学び終える頃には、機械翻訳に頼らずとも、中国語の文献やニュースを理解し、中国語母語話者と問題なくコミュニケーションをとることができるようになります。

中国語圏には、日本との間に、外交的、歴史的な問題が山積している国、中国も含まれます。地政学的にこれほど近い位置にある国なわけですから、避けて通ることなどできません。むしろ、中国のことを内と外の両面から知ることを通して、今後の日中関係に寄与したいと考える諸氏を私たちは歓迎します。

「専門知識×外国語」。本当の意味で到達するためには、険しい道のりを歩まなければならないかもしれません。ですが、多彩な学問領域の専任教員を有し、直接教育法を採用した外国語教育を展開しているSFCであれば、きっと成し遂げることができます!共に中国語を学び、世界への扉を開こうではありませんか!

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